こんにちは、リビングボイスの石塚です。
人が亡くなり遺産の相続が発生すると、トラブルになりがちです。
そのため誰が相続人となって、どんな遺産をどのように受け継ぐのか、民法で細かく定められています。
民法のなかでも相続について定義されている部分が「相続法」です。
2017年、相続法は約40年ぶりに大幅な見直しが行われました。
日本で深刻な高齢化が進んでいることと、家族のあり方などの社会環境が大きく変化してきたことが背景にあります。

今回の民法改正で、新しく「配偶者居住権」と呼ばれる相続制度が始まります。
夫婦のどちらかが亡くなったとき、残された配偶者が引き続き同じ家に住み続けられるようにする制度です。
これまでは、たとえば相続人が複数いたなら、遺産を分配するために、残された配偶者が住み慣れた持ち家を手放さなければならないケースもありました。
配偶者が亡くなった上に、長年住み慣れた家を手放さなければならないのは辛い上に酷なことです。
そのため相続法を改正して、残された配偶者が持ち家に住み続けられるようにと作られた権利を「配偶者居住権」と呼びます。

妻と子の法定相続分は、それぞれ二分の一ですから、持ち家と預貯金の合計6,000万円の分ずつ、つまり3,000万円ずつ相続することになります。
妻がそのまま持ち家に住み続けることを希望した場合、持ち家分が2,000万円となるため、預貯金からは1,000万円だけしか相続できません。
子は家を相続しないため、預貯金から3,000万円相続します。
相続した金額的には平等に見えますが、妻は住む家はあるものの、預貯金が1,000万円しかないのは老後が不安です。
反対に子は家はないものの、預貯金だけで見れば、残された配偶者の3倍相続することになります。

今回の民法改正で配偶者居住権の制度が始まると、同じ例でどうなるのか見てみましょう。
まず預貯金4,000万円について、民法での法定相続の割合通り、二分の一ずつ、つまり2,000万円ずつ相続します。
そして持ち家については、妻が二分の一の1,000万円を「配偶者居住権」として相続し、子は残りの1,000万円を「負担付き所有権」として相続します。
「配偶者居住権」とは、その家に住む「権利」であって、「所有権」ではないことがポイントです。
また「負担付き所有権」は、その家の所有権になりますが、その家に住む権利はありません。
このようなかたちで相続することによって、妻は夫が亡くなったあとでも同じ家に住み続けられるうえ、現金も預貯金の半分を相続できることになります。

それではもし持ち家について、配偶者に生前贈与されていたとしたらどうなるのでしょうか。
先ほどと同じく2,000万円の持ち家と、4,000万円の預貯金のケースで考えてみましょう。
夫から妻に、2,000万円の持ち家の、二分の一である1,000万円が生前贈与されていたとします。
その場合、これまでの民法では、生前贈与分も相続財産としてみなされていたため、相続のときには合計6,000万円の二分の一、3,000万円の相続となり、生前贈与を受けても受けなくても、相続する額は同じことになっていました。
それが今回の民法改正では、生前贈与分を相続財産とみなす必要がなくなりました。
そのため遺産分割による取得額は、生前贈与分を差し引いた合計5,000万円の二分の一である2,500万円になります。
これに生前贈与を受けた1,000万円と合わせると、妻の受け取った財産は合計3,500万円となり、民法改正前より多くの財産を取得できるのです。


これまでの民法では、自筆証書遺言はすべて手書きで作成するよう決められていました。
遺言書そのものだけではなく、添付する書類すべてです!
普段から手書きする機会が減っているこの時代に、どれだけ大変なことか安易に想像できます。
特に財産の目録は、項目が多いと一苦労です。
また高齢となり、認知症を発症するような事態になると、文字を書くことが困難になるケースもあります。
今回の民法改正では、自筆証書遺言のうち、項目が多くて手書きするのが大変だった「財産目録」を、パソコンで作ることが認められるようになりました。
偽造防止のため、財産目録は署名と押印をします。
また通帳についても、コピーを添付すればいいことになりました。

これまで自筆証書で遺言を書いたら、自宅のどこか隠し場所に保管する方がほとんどでした。
そのためいつの間にか無くしてしまったり、他の書類に紛れて家族に捨てられてしまったりのトラブルもありました。
知らない間に内容が書き換えられたとの酷いケースもあったようです。
こうした問題を防ぐことを目的として、自筆証書で作成された遺言書を、法務局で保管できる制度が新設されました。


これまで口座の名義人が死亡すると、それを金融機関が把握した時点で引き出しができなくなることが一般的でした。
遺産分割が正式に終了するまでは、預貯金を引き出せなかったのです。
今回法が改正されたことにより、相続人は家庭裁判所に仮払を申し立てるか、または金融機関の窓口に仮払いを申し立てることで、預貯金を引き出せるようになりました。

「特別の寄与」とは、相続人以外の親族などが、無償で介護などを行っていた場合、相続人に対して金銭の請求ができるようになることです。
たとえば長男のお嫁さんがお姑さんの介護に長年尽くしていた場合、これからは金銭の請求が可能となります。

「遺留分の制度」は、法で決められた遺留分、つまり相続人に法で最低限保証されている相続分について侵害されたとき、相続財産から遺留分に応じた財産の引き渡しを求められる制度です。
これまで分割しにくい不動産や株式なども含め、相続財産そのものを引き渡すことになっていたため揉めごとが多かったのですが、改正後は基本的に遺留分相当の金銭を支払う方法になりスピーディーな解決ができます。
もちろん不動産や株式を遺留分として引き渡すことは今後も可能ですが、代物弁済の考え方により譲与所得税が発生しますので注意しましょう。

2017年に行われた相続法の改正について詳しくみてきました。
人が亡くなるとそれだけでも辛いのに、そこに相続のトラブルが発生すると精神的に疲弊します。
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